目次
原発性抗リン脂質抗体症候群とは
抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome, APS)は、以下の病気を発生させます。
- さまざまな部位の動脈血栓症や静脈血栓症
- 習慣流産などの妊娠合併症
APSの患者数
SLEの10-20%がAPSを合併していると推定されること、原発性APSがSLEに伴う二次性APSと同等数いると推定されること、日本でSLEが60,000人以上いると推定されていることなどから、以下の患者数がいると想定されます。
- 二次性APSが5,000~10,000人程度
- 原発性APSも同程度の5,000~10,000人程度
- 平成28年度に原発性APSで難病申請を行った方は全国で314名(SLEなど他の難病を併発している場合には、APSではない病名で難病申請を行っているため、APSの想定患者数に対して、難病申請をした人数が少なくなっていると思われます)
APSはどのような人に多いか
- APSの約半数は、SLEに合併
- そのほか原発性APSでは、明らかな基礎疾患がない
- 若年で脳梗塞を発症する方や流産を繰り返すことでAPSが発覚することがあります
APSの原因
その他の膠原病と同様に、「遺伝的要因と環境的要因」が発症の原因であると考えられてはいますが、明確な原因は明らかになっていません。
APSは遺伝するのか
明らかな遺伝性はないと考えられていますが、家族内、親族内で発症する場合も報告されています。
APSの症状
APSでは様々な部位の動脈血栓症や静脈血栓症、習慣流産などの妊娠合併症がおこります。
動脈血栓症
- 脳梗塞や一過性脳虚血発作が多くみられます。閉塞する脳血管の部位により様々な症状をきたします。脳梗塞に比較して心筋梗塞の頻度は少ないとされています。
- 末梢動脈の閉塞による皮膚潰瘍や網膜の動脈の血栓症による視野障害や失明が起こることもあります。
静脈血栓症
- 下肢の深部静脈血栓症が多く、下肢の腫脹や疼痛がみられます。
- 下肢の静脈にできた血栓が肺に飛んで肺血栓塞栓症をきたし、胸痛や呼吸困難などをきたし時に命にかかわることもあります。
妊娠合併症
- 習慣流産、子宮内胎児発育遅延、妊娠高血圧症候群などがあります。
関連症状
- 心臓の弁の異常(弁膜症)、
- 四肢にみられる網目状の皮疹(網状皮斑)、
- 血小板減少、
- 腎障害、
- 神経症状
稀に、劇症型APS
まれではありますが、多臓器の血栓症、臓器障害をきたし、急激な経過をとり致死率の高い劇症型APSという病型もあります。
APSの治療法
APSの急性期の動静脈血栓症に対しては、通常の血栓症の治療に準じて抗血栓療法がおこなわれます。
APSでは血栓症の再発が多く、急性期の治療に引き続き、再発予防が重要となります。
再発予防には、
- 動脈血栓症では主にアスピリンなどの抗血小板療法
- 静脈血栓症には主にワルファリンなどの抗凝固療法
妊娠合併症の既往のあるAPS患者が妊娠した場合は、少量のアスピリンに加えてヘパリンの投与を行うことが推奨されています。
症状がない場合も多い
抗リン脂質抗体が陽性であっても、症状がなければ治療の必要はありません。
APSの経過・予後
APSでは血栓症の再発率が高く、長期にわたる抗血小板療法、抗凝固療法が必要となります。
欧州で行われた検討結果では、
- 5年生存率が94.7%
- 10年生存率が90.7%
主な死因としては、
- 感染症
- 悪性腫瘍
- 血栓症(心筋梗塞、脳梗塞、肺血栓塞栓症など)
- 出血
などが報告されています。
日常生活の注意点
日常生活において血栓症の危険因子を減らすことが必要となります。
具体的には禁煙、高血圧や脂質異常症の改善、経口避妊薬の中止などが必要です。
私の場合
私の場合は、下肢に血栓ができました。(深部静脈血栓症(静脈血栓症)。
私は、下肢の痺れ、正座をした後のような痺れなどの自覚症状がありました。
血液の凝固を示すDダイマーの検査値がグングンと上昇して、私から強くお願いをして下肢エコーをして、下肢に血栓があることが判明したのですが、
一般的な下肢血栓の症状である下肢の腫脹や疼痛はなく、見た目や触診でも左右差・違和感などはなく、CTで血栓が確認された時には医師が驚いていました。
(放置した間に血栓が飛ばなくて良かったです。ちなみに私の主治医によると、膝から下の血栓が、上半身、肺や脳に飛ぶことはほぼないそうです。エビデンスなどは確認していません。)
治療
- 6日間ほどヘパリンを点滴して、
- その後ワルファリンの服薬に切り替え
- 手術の時などに使用される弾圧ストッキング