PD-1欠損ノックアウトマウスは自己免疫疾患を発症|がん免疫治療薬「オプジーボ」からSLE新薬の可能性

講談社出版の「世界を救った日本の薬」を読んでいると本庶佑先生の「ニボルマブ(オプジーボ)がん免疫治療薬」のページに以下のような記述がありました。

PD-1を欠損させたノックアウトマウスでは、ループス腎炎や関節痛などの自己免疫疾患を発症する。」「世界を救った日本の薬」75p

「免疫のブレーキ役であるPD-1をブロックするだけでなく、ブレーキをブレーキとして利かせれば、自己免疫疾患の治療に繋がる可能性がある」「世界を救った日本の薬」86p

そこで、これまでの各研究機関のプレスリリースなどを調べ、主治医に教えてもらったことを合わせて、まとめました。

注意:あくまで、SLE患者が執筆した記事です。この内容の正確性、解釈等について、著者は一切の責任を負いません。読者様の責任の元、ご利用ください。

スポンサーリンク

PD-1と自己免疫疾患の治療研究

PD-1とは?

PD-1は、活性化リンパ球に発現するレセプターで、生体防御と自己免疫疾患の両方に必須なTリンパ球の、過剰な活性化を抑制することが知られています。

PD-1欠損により自己免疫疾患が発症する

「PD-1を欠損したノックアウトマウスは、自己免疫疾患を発症します」

PD-1の欠損は、多発性硬化症、I型糖尿病、リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)などの難治性自己免疫疾患の遺伝的危険因子とされています。

京都大学が2013年に発表しているプレスリリースでは、

  • PD-1欠損マウスではTリンパ球から過剰のサイトカインが産生され、
  • 自己免疫発症の第一のステップが突破されることを見出していました
  • (Chikuma et al. J Immunol, 2009)。

しかし、難病の発症には、T細胞のさらなる悪玉細胞への分化が関わっており、これには微生物などの環境因子に対して初期の炎症反応を起こす細胞群「自然免疫細胞」が産生するサイトカインが必要とのことです。京都大学HP(2013年9月)を参考にしました。

そのほかの大学等においてもPD-1と自己免疫疾患に関する研究は数多くされているようで、インターネットで検索しただけでも、いくつかの論文を読むことができました。

2010年には、「自己免疫疾患モデルマウスを用いた自己免疫疾患感受性遺伝子の同定と解析」(岡崎 拓 徳島大学 疾患ゲノム研究センター ゲノム機能分野)

余談ですが、この論文によると、「人口の5%が何らかの自己免疫疾患(関節リウマチ、SLE、炎症性腸疾患、多発性硬化症等)に罹患しているといわれている」とのことです。自己免疫疾患の患者数って多いんですね。

主治医の話

世界的にも、免疫分野の研究は、旬なテーマだそうです。ただ、「具体的な治療」という点では、まだまだ先の話だとのことです。(あくまで、私の主治医、一個人の考えであることをご理解ください。)

話題のオプジーボ(二ボルマブ)

少し、話はそれますが、本庶佑先生のノーベル賞受賞を受けて、話題となっている「がん免疫治療薬 オプジーボ(二ボルマブ)」についても、少しご紹介しておきます。

免疫機能が正常に働いている状態では、私たちの体はがん細胞を「自分ではないもの」と判定し、免疫細胞が、がん細胞を攻撃して、正常な状態を保つことができます。

しかし、がん細胞は、免疫機能による攻撃を受けないように、「PD-L1」という物質を作り出します。このPD-L1という物質が、がん細胞を攻撃するT細胞のPD-1受容体と結合すると、「正常な免疫に対して」「がん細胞への攻撃を止めろ!」という信号が発信されます。こうして正常な免疫機能にブレーキがかかり、がん細胞が増殖してしまいます。

そこで、オプジーボはT細胞のPD-1に結合して、がん細胞から作り出されたPD-L1との結合を阻止することにより、免疫機能にブレーキがかからないようにして、T細胞のがん細胞を攻撃する力を高めます

簡単にいうと、「自分の免疫機能を正常に働かせることで、がん細胞を攻撃する」と言った治療薬です。

>コチラの記事も人気です

ステロイド標準治療と副作用大腿骨頭壊死症骨粗鬆症

セルセプト標準治療と副作用血中濃度と維持量の決め方

プラケニル標準治療と副作用

関連記事免疫抑制剤と後発薬使用(ジェネリック)

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする