毎月の薬にかかる医療費が、3万円を超え、セルセプト(MMF)を後発薬(ジェネリック医薬品)に変更するか、悩みました。
先発薬と後発薬は100%同じ薬ではないからです。
残念ながら、SLEなどの膠原病の治療において、「免疫抑制剤を先発薬から後発薬に変更すること」に関するデータを見つけることはできませんでした。
そのため、今回は、移植時における「免疫抑制剤を先発品から後発品に変更すること」への考察をご紹介します。
免疫抑制薬の後発品については、2015年頃に興味深い論文が相次いで発表されています。
記事の内容について、著者は一切の責任を負いません。 ご自身の責任の上で、お読みいただきますようお願いします。
目次
免疫抑制剤の後発医薬品使用ガイドライン
(「免疫抑制薬の後発医薬品使用に関する一考察」本間真人より引用)
血中コントロールの観点からはデータが不足している現状
免疫抑制薬は、薬価が高額であり、後発薬(ジェネリック医薬品)への変更により、
大きく医療費を削減できるという経済的なメリットが大きいです。
しかし、日本における移植の機会は世界的に少なく、免疫抑制剤に関するデータの蓄積が十分でないことが現状です。
結論としては、免疫抑制薬を後発薬に切り替えること自体が拒絶反応のリスクを高めるか否かは科学的に明らかにされていません。
しかし、少なくとも血中濃度のコントロールの観点からは先発品に比べてデータが少なく安心して使うための情報が不足していることは確かです。
セルセプトは、40%以上で血中濃度が変動すると予測
健常被験者26名を対象に、MPA の薬物動態パラメーターを比較
- MMF の先発品(セルセプト®)
- 後発品(ミコフェノール酸モフェチ ルカプセル「ファイザー」®)
例えば,消化管吸収の指標であるMPAのTmaxとCmaxを比較すると、
- 両者がほぼ一致している例は、26名中3名(11.5%)
- TmaxまたはCmaxが一致している例は、それぞれ9名(34.6%)と8名(30.7%)
- TmaxとCmaxともに一致していない例が11名(42.3%)
両者が一致していないケースが最も多いことは
先発品から後発品への切り替えによって
40%以上の被験者で血中濃度に変動が生じると予測される。
血中濃度が著しく低下した症例も
第 18 回ジェネリック医薬品品質情報検討会の学会・文献調査において、腎移植後の患者で免疫抑制薬であるセルセプト(MMF)を先発薬から後発薬に変更したことにより、血中濃度が著しく低下した2症例を紹介。
タクロリムスでも薬物動態が違う(ただしトラフ血中濃度には明らかな違いはない)
高齢の腎移植患者 25 例(中央値:69 歳)を対象に、
タクロリムスの先発品(Prograf®)と後発品(Tacni®)の血中濃度パラメー ターを比較
- 後発品の AUC は先発品の 1.17 倍,Cmax は 1.49 倍と有意に高く(p<0.05),
- Tmax は0.71 倍と有意に短縮している(p<0.05).
このことは,後発品は先発品に比べて消化管吸収が早く、吸収率も若干高いことを示しており、両者は明らかに薬物動態が異なる。
しかし、トラフ血中濃度に反映されず
トラフ血中濃度を指標とする通常のTDM では両者の違いを識別できない。
免疫抑制剤の後発品への切り替えは慎重に
2014 年に作成された「免疫抑制薬 TDM 標準化ガイドライン[臓器移植編]」の中で、
カルシニューリン阻害薬(タクロリムス、シクロスポリン)について、 『先発品と後発品の切り替えの際は、TDM の頻度を上げて切り替え前後の血中濃度推移を確認するとともに、主治医や当該病院の担当薬剤師との連携を密接 に図ることが望ましい。』とされている。
今回ご紹介した内容は、あくまで移植時に使用された免疫抑制剤に関するお話です。
SLEや膠原病の治療で免疫抑制剤を使用する場合は、移植時と比較して大きく神経質になる必要はないのかもしれませんが、少し神経質に考えてしまう私です。
でも、毎月3万円支払う医療費負担が結構しんどいのです。
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