腎臓は、非常に大切な臓器でありながら、悪くなっても自覚症状がないことなどから、障害の発見が遅くなりがちです。たかが「蛋白尿」「血尿」と放置しては、手遅れになってしまうかもしれません。
今回は、腎臓の細胞を採取して調べる「腎生検」は、どのような時に行うのか、その方法とリスク等について分かりやく解説しています。
目次
どのような時に腎生検を行うのか?
【1】血尿のみの場合
- 一般的に血尿のみであれば、まず尿路系疾患(腫瘍、結石、感染症)など泌尿器科的な検査を優先
- ただし、程度が高いなど腎臓の糸球体疾患が疑われる時は、腎生検を行う
【2】蛋白尿のみの場合
- 尿蛋白が「+~2+」程度が継続
- 1 日尿蛋白量が0.3~0.5 g以上の場合
【3】血尿と蛋白尿を認める場合
- 積極的に腎生検を行う
- 特に,尿沈渣で赤血球円柱を認める場合には、腎炎の活動性が高い可能性があり病理学的評価が必要
【4】全身性疾患に伴う腎病変
- SLE(全身性エリテマトーデス)など腎障害を合併しやすい全身性疾患においては腎生検は非常に重要である.
※この記事は、SLEにかかるループス腎炎のケースを扱っており、移植等のその他のことについては記載していていません。
腎生検の目的
- 腎障害をきたしている疾患の確定診断
- 腎病変の程度の評価
- 治療方針の決定
- 予後の推定
- 治療の効果判定
- その他、妊娠の可否などの判断
腎政権はリスクが大きい検査なので、検査のリスクが効果を上回る場合にのみ実施されます。
方法(腎生検組織採取法)
全身麻酔で行うこともありますが、今回は一般的な局所麻酔での腎生検の方法をご紹介します。
- 体位:患者はうつ伏せになります。呼吸による腎臓の移動を最小限に止めるため、お腹に枕を当てることもあるようです。
- 消毒:背中に衛生を確保するためのシートをかぶせられます。穿刺部位の周辺が消毒されます。
- 穿刺部位の決定:左右どちらの腎臓を採取するか、また、超音波のガイドを使って、穿刺部位を決めます。一般的に、肝臓を避けて左の腎臓で行うそうです。
- 局所麻酔:刺す皮膚と針の挿入路に沿って皮下組織、筋層、腎周囲脂肪組織、腎被膜周囲の順に局所麻酔が打たれます。
- 穿刺(組織採取):モニター画面を見ながら、患者の呼吸を合わせて、腎臓表面まで穿刺針を進め、腎臓を採取します。
- 止血・血腫の確認:患者の背部を圧迫して止血します。超音波で血腫の有無を確認して、穿刺部に圧抵します。
- 仰向けに:穿刺針刺入部を圧迫された後は、仰向け(仰臥位)にさせたれ、圧迫砂囊を当てます。
- 生検後の安静:翌朝まで、仰向けの状態で安静を保ちます。超音波で血腫を確認して、安静を解除します。生検後の安静・観察期間は24時間とされることが多いです。
(参考:日本内科学会雑誌2103.5.10「診断法 尿異常から腎生検まで」)
合併症
腎臓は血流量が多い臓器であるため、軽い出血は避けられませんが、腎生検後は、安静の継続など経過観察のみで問題がない場合がほとんどです。
- 輸血や外科的処置が必要な出血は、日本の全国集計で1,000人あたり2人程度
- 死亡症例は、日本の3年間の全国集計で30,000回で2名
- すなわち、15,000回で1名の危険度です。
重症の出血の対処法は、腎臓の動脈に管を入れ血管を塞いで止血します。手術により出血部位を除去するか、最悪の場合は腎臓自体を取り除くこともあります。(慶応義塾大学病院HP「腎生検」を参考にしました)
入院期間
入院期間は、病院や患者によって大きく異なります。最短で、1泊2日から原則2泊3日で退院できる場合もあるようです。2泊3日の場合、入院日の午後に腎生検を行い、翌々日に退院するスケジュールです。
私の病院では、最短で3泊4日、一般的に4泊5日の人が多かったと思いますが、一週間以内と考えておくといいでしょう。
費用
おおよその費用の目安は、2泊3日で5〜6万円程度です。
入院期間が長くなれば、費用も高くなりますが高額療養費制度を使うことができるので、自己負担は最大で8万円程度です(年収約770万円以下の場合)。
そのため、腎生検の費用については大きく心配する必要はないでしょう。
結果が出るまで
「腎生検の結果が出るのが遅い」という声を聞きますが、病理判断できる人さえいれば、検査結果の概ねの予想はすぐ分かるそうです。(光学顕微鏡?の結果については数ヶ月を要します)
私の場合は、数日後に腎生検の結果を聞きました。
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