マルチターゲット療法(MMF+Tac)は「ループス腎炎の寛解導入療法において従来の治療法(IVCY)に代わる治療選択肢とみなされるべきである」ロイターメディカルニュース(2014年11月19日)
用語の確認
- ミコフェノール酸モフェチル(MMF)「セルセプト」
- タクロリムス(Tac)「プログラフ」
- シクロホスファミド(IVCY)「エンドキサン」
- ミゾリビン(MZR)「ブレディニン」
>>詳しくはコチラ
セルセプト◯標準治療と副作用・血中濃度と維持量の決め方
プラケニル◯標準治療と副作用
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MMF+Tac併用療法群は寛解達成率が高い
ループス腎炎(Ⅳ型+Ⅴ型)の寛解導入療法として、以下の2つの治療法の「完全寛解達成率」について比較したデータがありました。(ループス腎炎に対するマルチターゲット療法(2015年10月))
- MMF+Tac併用のマルチターゲット療法
- IVCY療法
完全寛解達成率 | 6カ月後 | 12カ月後 |
MMF+Tac | 50% | 65% |
IVCY | 5% | 15% |
従来から治療実績があるIVCY(シクロフォスファミド・エンドキサン)ではありますが、寛解率は高くはありません。
MMF+Tacの併用が有意に優れている結果となっています。
>参考記事
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MMFとTacは異なる作用点
MMFとTacは、それぞれ異なる作用点を有することから,このような併用療法はマルチターゲット療法と呼ばれます。
- MMFはプリン代謝拮抗作用薬
- TacはT細胞を標的としたカルシニューリン阻害薬
2015年にMMFがSLEに保険適用拡大される以前は、ミゾリビン(MZR)「ブレディニン」によるMZR+Tacの併用療法が行われており、MMF+Tac両方同様に高い寛解達成率を達成してきました。
近年は、生物学的製剤の開発も進んでおり、,今後のマルチターゲット療法のさらなる臨床応用が期待されています。
私の場合
私は、活動性が高いループス腎炎Ⅳで、寛解導入まで非常に苦戦しました。
腎生検後、入院して
- ステロイド60mg
- セルセプト
- プラケニル(ヒドロキシクロロキン)
の3剤で寛解導入を目指しましたが、クレアチニンの増加・腎機能の低下が続きました。
>腎生検について詳しくはコチラ
その時に追加の治療として主治医から提案されたのが、エンドキサン(IVCY)の点滴あるいは、プログラフ(Tac)を追加したMMF+Tacのマルチターゲット療法でした。
それぞれ副作用の負担なども異なっており、
- エンドキサン(IVCY)は、古くから実績がある治療法であり、エビデンスが揃っている一方で、妊孕性への副作用の問題がある(私がアラサーであることもあり、主治医は「できる限りIVCYは使用したくない」という意見でした)
- プログラフ(Tac)は、腎機能を障害する副作用があり、長期で使用することはできない。腎機能の悪化が止まらない現状で、使用するべきか難しい判断。(ただし、全ての人に腎障害が起こるわけではなく、プログラフを長期で服薬されている人も多くいるそうです。)
幸運にも、私は、ステロイド・セルセプト・プラケニルの3剤により、ひとまず寛解導入することができました。
ただし、今後、SLEやループス腎炎が悪化した場合には、「追加治療としてIVCYあるいは、Tacの追加を検討する」と主治医に脅かされています。
SLEの治療は、重症度により大きく異なります。ただ、2015年にセルセプトとプラケニルが承認されて以降は、
- 初期の標準治療としてステロイド+セルセプト+プラケニル
- 必要に応じて、免疫抑制剤の種類を変える
- 最終手段としてエンドキサンパルス
となっているようです。ちなみに、「ステロイド+セルセプト+プラケニル」は世界的に推奨されている治療法だそうです。
>治療経過(ブログ
09月◯PLS13mg・抗DNA抗体が適正値
ご注意
- あくまで私の場合のお話です。
- 記事の利用・解釈はご自身の責任に基づきお願いします
- 詳しくは主治医にご相談ください
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