10年近くステロイドを服薬してきた膠原病患者が、ステロイドの標準的な治療方法や副作用、実際の体験談などをお話しします。
この記事は、膠原病や自己免疫疾患の治療を目的として服薬するケースを前提としています。
ステロイドとは?
ステロイド(副腎皮質ホルモン)は、もともと私たちの体(副腎)から分泌されているホルモンです。
糖質コルチコイド、ステロイドと呼ばれることもあります。抗炎症作用、抗アレルギー作用、免疫抑制作用があり、様々な病気の治療に使われています。
標準的なステロイド治療
- 軽度であれば、通院で20mg以下の服薬で治療を開始する場合もあります。
- 膠原病・自己免疫疾患を発症した際、特に急性期であれば、入院して60mgの大量投与が初期の治療となることが多いです。
- 再発を繰り返したり、60mgの反応が悪いときなどには、ステロイドパルス療法という3日間点滴で大量に投与することもあります
- プレドニン換算で20mg〜30mgを超えるステロイドを服薬する際には、入院する必要があります。
入院治療は2ヶ月程度必要
入院すれば、ステロイド60mgからの治療が行われますが、ステロイドの服薬を20〜30mgに減らさなければ、退院することができません。
60mgを投与して効果が出れば、すぐに30mgに減薬することができれば良いのですが、ステロイドは一度大量に服薬すると一気に減薬することができません。
一般的に1週間で1割程度の減薬が進められます。
私は、ステロイドの大量投与で3回入院していますが、
- 1回目がステロイドパルスをしたこともあり2ヶ月強、
- 2回目が最大60mg投与で2ヶ月弱、
- 3回目(今ココ!)は、2ヶ月半〜3ヶ月弱となりそうです。
また30mg以下の減薬については、一層慎重になりますので、
0にするためには長い時間が必要です。
飲み方
服薬の仕方は、治療する疾患によって異なるので、主治医にご相談ください。ここでは、参考までに私の経験をお話しします。
- 特発性血小板減少性紫斑病:ITPの場合:1日分の薬を朝に全て飲みきる
↑体内で作られるステロイドは朝に一気に出るそうです。それに合わせて、服薬するステロイドを一気に飲むことで、ステロイドの血中濃度を1日のうち1回だけ一気に上げたいという目的があるそうです。 - 全身性エリテマトーデス:SLEの場合:1日分の薬を朝昼夜の3回に分けて飲む
↑ステロイドの血中濃度を1日を通して平準的に保つ目的があるそうです。でも入院中は、朝食8時、昼食12時、夕食18時なので、これで1日を通して平均的に保てているのか、疑問ですが、医師はそれでいいと言っていました。
一般的な注意すべき副作用
副作用は、とても怖いです。大量に投与するほど、また、長期にわたって服薬するほど、副作用のリスクが高まります。
個人的には、一過的な副作用であるムーンフェイスやニキビなどは仕方がないと考えています。
私も女性ですので、心無い言葉に傷ついたり、辛い思いをしたことも多くありますが、外見より生きることが大切ですので、諦めています。
それよりも怖いのが、ステロイドを原因とした二次的な疾患の発症です。
二次的疾患が怖い副作用
感染症のリスク
一般的に指摘される副作用が感染症のリスクです。
ステロイドは、自分の免疫力を低下させることで、炎症反応を抑える効果を発揮します。
そのため、通常であれば感染しないような日和見感染のリスクや、感染してしまった場合には重篤になってしまうことがあります。
そのため、大量に服薬する場合(20〜30mg以上)は入院する必要があるのです
- できる限り人混みを避けて、手洗い・うがい・マスクを着用しましょう。
- 感染予防の薬を飲むことが多いです(バクタ配合錠剤を予防に飲むことが多いです:ニューモシスチス肺炎の予防に有効な薬)
骨粗鬆症のリスク
ステロイドの副作用により、骨がもろくなる可能性があります。
- 骨密度の検査を定期的に受診すると良いでしょう。
- 骨粗鬆症の薬を飲むことが多いです(私の場合は、ベネット)。
- ビタミンDを合わせて飲むことも多いです。
>詳しくはコチラ→骨粗鬆症
大腿骨頭壊死症のリスク
個人的に最も恐れている副作用の一つです。太ももの付け根、大腿骨頭が壊死してしまうリスクが高まります。
- 予防法はなく、発生するかしないかは運だと聞きました。
- 壊死しただけでは痛みがなく、壊死したところが潰れて初めて痛みが出ます
- 股関節に痛みがないからと言って安心することはできません。
- MRIを受診するなど定期的な検査を行ってください。
>詳しくはコチラ→大腿骨頭壊死症
糖尿病・血糖値上昇のリスク
食事に関わらず、ステロイドの服薬により、血糖値が上昇しやすくなります。そのため、糖尿病の方はもちろん、予備軍の方も注意が必要です。血糖値が正常な人の場合でも、定期的に血糖値の測定を行います。朝だけでなく、1日の血糖値の推移をみることも大切だそうです。
- 私の場合は、ステロイド服薬の10年間で、空腹時血糖が70→90に変化しました。
- 今は、空腹時90、食後140ぐらいです。
胃腸の症状
長期で服用すると、胃や十二指腸に潰瘍ができたり、以前あった潰瘍が再発することがあります。
- 暴飲暴食を避け、喫煙しないことが大切です。
- 胃が痛かったり、黒っぽい便が出た際には、主治医に相談してみましょう。
- 私の場合は、もともとストレスが胃にくることが多いので、胃痛にはいつも悩まされています。
- でもステロイドを大量投与している今は、全く胃痛がないので、ステロイドの副作用かどうかはわかりません。
高脂血症やコレステロールが上昇するリスク
食事に関わらず、コレステロールや中性脂肪が上昇することがあります。
- コレステロールは、ステロイドを始める10年前と比較して確かに上昇しました。
- 今は220程度です。
- ただ、これも生活習慣の変化や加齢などの影響もあると思われ、一概にステロイドの影響かはわかりません。
- 今回のステロイド大量投与においては、大きく反応はしていません。
白内障・緑内障になるリスク
白内障とは、目の水晶体が曇ってモノが見えにくくなる病気です。緑内障とは、眼圧が高くなって視神経を圧迫し、視野が狭くなって失明にいたる病気です。
- 眼科を定期的に受診するなど、早期に発見できるように注意しましょう。
一過的な問題なので我慢したい副作用
ムーンフェイス・中心性肥満:
ステロイド特有のまるまるとしたお顔になってしまうことをムーンフェイスと言います。
ステロイド服薬者から見ると「この人もステロイド飲んでるのかな」っていうことが分かるような気がします。
体幹もぽってり丸くなることが多いです。
でもこのムーンフェイスや中心性肥満は、単純に「太った」というわけではありません。ステロイドを減薬すると必ず改善します。
私は、このムーンフェイスの悪化と改善を実際に実感しています。
確かに、ステロイドの量が多いと顔が丸くなる。でも減量するにつれて、改善する。
ステロイドをゼロにできた期間は、7キロ痩せていたステロイド服薬時より、スッとした顔をしていました(たった1年間でしたが。泣)
特に、女性にとっては、辛い副作用であると思います。
私も、心無い言葉に、何度も傷つきました。でも、一時的な副作用です。
減らせば、改善します(それが難しいのだが。笑)。
ムーンフェイスが一番嫌という人もいますが、
私は個人的には、大腿骨頭壊死症など二次的疾患の発生の方が深刻な副作用であると思います。
私は、ムーンフェイスについては、諦めています。丸くても、笑われても、生きていることの方が大切です。
>体験談はコチラ→ムーンフェイス
食欲が増す
特に大量に服薬している時には、食欲が増すことが多くあります。
私は、異常にお腹が空くのに、食欲がない、でも食べ始めると全部食べてしまうという状況になることが多いです。
しかし、食欲に任せてたくさん食べてしまうと、上記の糖尿病や高脂血症が悪化する可能性もあります。
また、ムーンフェイスは、ステロイドの減薬で改善しますが、食べ過ぎてガチで太ってしまうと当然ながら、ステロイドの減薬により痩せることはありません。
ここは、強い気持ちで、栄養管理をしていきたいです。
不眠・鬱など精神的に不安定になりやすい
ステロイドを大量に投与すると眠れなくなります。
特に、朝昼夜と3回に分けて飲む場合には、一層、眠りにくくなると思います。
睡眠薬などを服薬している人も多いようです。
また、鬱っぽくなったり、イライラしたり、精神的に不安定になりやすいです。
私の場合は
- 毎晩、泣いていました。(ただ、薬の副作用なのか、病気になったこと自体が辛いのかは分かりません)
- 神経が興奮してると思うことがありました。(異常なまでに、PC作業に集中したり、意欲が高まったりしました)
- ステロイドの副作用で精神的に不安定になりやすいことを誰か一人に理解してもらって、話を聞いてもらったり、サポートしてもらったりすると良いと思います。私は、大学からの腐れ縁である大親友にサポートしてもらっています。
>詳しくはこちら→不眠
皮膚が細くなる
皮膚が薄くなったり、毛細血管が脆くなります。その結果、青あざができやすくなったり、出血しやすくなったりします。
個人的に感じた副作用
その他、医者にはあまり理解してもらえなかった個人的な副作用をいくつか挙げて起きます。
- 減薬時の頭痛:ステロイドパルスをして、60mgから初めて減薬する際には、頭痛に悩まされました。特に、退院後20mg以降の減薬時の頭痛がひどかったです。その後の再燃、再発により、再び大量投与した後は、大きな頭痛はなかったのですが。
- 抜け毛:本当に悩んだ副作用です。でも、まー最悪、カツラを買おうと決めて諦めました。
色々と副作用が怖いステロイドですが、私の命を救ってくれたことも事実です。
難病と出会い、諦めそうになった自分の人生を、また自分らしく生きられるようになった時にもいつもステロイドがそばにいてくれました。
これからも、うまくお付き合いしながら、いつか円満にお別れできる日を目指して生きます。
>>ステロイド(プレドニン・プレドニゾロン)
◯【保存版】膠原病患者が知っておくべき免疫・抗体検査項目一覧表
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必ず医師・薬剤師にご相談ください。
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